雨曝しな気持ちは言葉にするべきだ

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amazarashi大好き系ブログ

6thフルアルバム「七号線ロストボーイズ」の感想です

こんばんは、ダーレクです。スケジュールノートの短歌は10月推しです。


大成功を収めたであろうロスボツアー青森公演の余韻の裏で、のんびり温めていた「七号線ロストボーイズ」の感想をお送りします。


各曲の感想

『感情道路七号線』

感情道路七号線

感情道路七号線

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短い曲なのは予め判明していたわけですが、蓋を開けてみれば全編メロディ付きの所謂まえがきタイプでした。

ここに来てまさかポエトリーリーディングを封印するとはびっくりですね。結果としてアルバム内で一言も喋ってないですよ今回の秋田さん。昔からインタールードとか名刺代わりとかで好んで入れているっぽかったのに。

ただ、最高音がmid2Gなのはワープロからずっと受け継がれているようです。


「この歌を歌うな環状線に鯨〜」って息継ぎする気ゼロでBメロ(?)に流れ込むのが耳気持ちいいポイントです。

特に「環状線に鯨」のメロディは東海オンエアの旧ED曲のギターと似ているお陰で、僕にとってはやたら覚えやすかったです。親近感つきすぎ(?)

この街には何故かポスト見当たらないのは
誰も伝えたいことなんて無くなったから

秋田さんの得意技“のはから構文”(と勝手に呼んでる)は今作でも健在でした。

前例『僕が死のうと思ったのは』『月が綺麗』『鴉と白鳥』では、いずれもサビの歌い出しでこの構文が炸裂しています。

“ポエトリー枠”であろうこの曲もそれに違わずサビっぽいところの歌い出しで使われていて、秋田さんは今年も秋田さんだなぁとしみじみ思うのでした。


3連符のイントロ曲からシャッフルビートの『火種』に繋がるのがカッコいいですね。


『火種』

火種

火種

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いざ聴いてみてもやっぱりラジオで流れてそうな曲じゃないですか?笑

『アオモリオルタナティブ』は結構ラジオ顔だったと思うんですけど、『1.0』がこの曲を差し置いてオンエアされたのはやっぱり変な気分です。


という第一印象はさておきamazarashiのアルバムの2曲目としての期待通り、物理的(?)な衝撃は『1.0』をも凌ぐレベルでした。

初聴時、1番の間奏で思わず「お゙ーー」って声が出たあの感動が強烈すぎて忘れられません。


全体を通して難解な歌詞と分かり易い歌詞でメリハリをつけられているのが特徴で、「テレプラズム…?」とか意識が散ったところにハッとする歌詞をぶっ込まれるので、リアクションがなかなか忙しくなります。

中でも「窮地は僕に微笑んだ」のような、マイナスをあえて“マイナス×プラス=マイナス”で遠回りして皮肉る表現が好きです。

「誰のせい」とか 「何処で間違った」とか
決意が廃るぜ 選んだのは僕だ

明るいamazarashi歓迎派の僕ですらこの決意ガチガチのフレーズは眩しすぎて直視できません。たらればのこっち側をここまで強く肯定している曲も珍しいと思います。

「どうせ誰も助けてくれない それを分かって始めたんだろう」と自身に問いかける『ジュブナイル』のCメロと目指す方向は同じなのに、苦悩表現のボリューム次第で印象が大きく変わるのは不思議ですね。

ちなみにこの辺は多数決の「息を止めた憐れな」とメロディが似ています。(揚げ足)


一方、秋田さんの音域界ではとんでもないビッグニュースが。

サビ前半「泣叫んだ」「きは誰だ?」「さも見えぬ」の3箇所にて、遂に地声hiBが観測されました(ハモリで)「すうんじゃく」の裏声と同じ高さです。

これは従来の地声最高音hiA#(激レア)よりも鍵盤1個分高く、裏声でもないのにこの高さが曲中で使われたのは勿論初めてのことでした、、、

どうせライブでは豊川さんが歌うからってとんでもない大盤振る舞いです。


『境界線』

境界線

境界線

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もうこの曲には7ヶ月以上お世話になっています。よくよく考えると「境界線の感想!」的な記事は一度も書いていませんが、ずっと感覚的に聴いてきたので今更文字に起こすのも難しいんですよね。

転調した訳でもないのにサビに入ると突然違う世界に放り込まれたような感覚になるのが好きです。ってツアー中に何度か書いた気がします。

というかツアー初日にサプライズで聴けちゃった因縁で、正直ボイコットツアーの印象があまりにも大部分を占めてるんですよね。サビの紗幕映像は何度観てもあの瞬間が掘り起こされて鳥肌もんです。


そんな訳で今回は、唯一の既存曲ポジという視点からアルバムに絡めた話を少し。

natalie.mu

「境界線」は最初から入れると決めてたので、それとは別パターンのアッパーな曲をと思い「火種」を作りました。

前作「ボイコット」では積もり積もった既存曲が幅を取って半プレイリスト状態だったのが、今作はむしろ『境界線』から逆算して楽曲が制作される程の余裕がありました。

この差はアルバム全体としての聴き心地にも直結していると言えそうです。何なら今までのアニソンで一番アルバムに馴染んでると思っています。


反対に、前作から引き続き(僕の中で勝手に)課題となっているのがポエトリー枠の消滅です。

アイザック』とか『太陽の羽化』とか、近年も発展が目覚ましいポエトリー曲の試行錯誤を楽しんでいる身としては地味に寂しいポイントでした。

それこそ境界線の次とか『夜の一部始終』の生き写し的なひとくちポエトリーがあっても良かったように思います。そしたらちょうど12曲になるし。


ロストボーイズ』

ロストボーイズ

ロストボーイズ

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初日に1周だけ聴いた段階での最推し曲。

回想を思わせるようなイントロ、緩やかに涙腺を撫でてくるBメロ、そして何より1番の「h張ぁり付ーいたぇーー」が大好きです。


地味にアルバム内で最長の曲だったりします。というのも、3番がCメロ→Bメロ→サビという構成になっていて他の曲に比べてボリューミーなんですよね。

特に、Cメロとラスサビが引き裂かれるなんて前代未聞の出来事です。流石は元々サビを任されていただけの事はありますね。

『さよならごっこ』辺りからamazarashiにも取り入れられるようになった“落ちサビ”の役割もこのBメロがかっさらっています。


「少年は闇の中」がサビだったということは、あの高音メロディで「少年はやーみのーなか」って歌ってたんでしょうか。そう言われると「神様も知らないこと」らへんまでは違和感なく歌えなくもないような。

「いい曲はどこを切り取っても伝わる」みたいな話をどこかで聞いた事がありますが、こういうのが最たる例なのかな〜と思ったり。

少年は闇の中 十年経っても闇の中
襲われる「あの頃良かったよな」 振り解く「まだまし今の方が」

ポルノ映画の看板の下で女の子がずっと誰か待ってそうなCメロを抜けてやってくる最後のBメロ。ここだけは1番2番のような伸びを見せずに、淡々と言葉を紡ぎ続けていきます。

吹っ切れて希望をISSUEしている『空白の車窓から』と違って、この曲ではまだ過去の自分と交戦中でした。僕が共感できるのもどちらかと言えば「あの頃良かったよな」に襲われる方です。


ところでこの曲には1箇所だけ秋田日記から変更された歌詞があります。

  • 変更前

誰にも話せないこと 吐き出した黒いものを この世の終わりなんだ ゴミ箱を漁られたら

  • 変更後

誰にも話せないこと 吐き出した濁ったもの この世の終わりなんだ ゴミ箱を漁られたら

秋田日記の段階では「黒いもの」との事だったので、ノートに書き殴った黒歴史な何かだと捉えていました。

ところがリリースされてみたら「濁ったもの」になってるし、付属詩もなんだかイカ臭かったし、こんなんただの健全な少年じゃないですか。そりゃあ確かに少年の隠し事ランキング堂々の1位だわ。

ところで、この歌詞で喜んでいるのは男性ファンだけのように感じるのですが気のせいでしょうか。これだから男死は!って今にも聞こえてきそうなんですけど。


『間抜けなニムロド』

間抜けなニムロド

間抜けなニムロド

  • amazarashi
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イントロも主旋律も豊川さんのコーラスも不穏な感じが気持ち悪くて(褒め言葉)、前作の『アルカホール』みたいなイロモノ枠という印象に落ち着きました。あとCメロの歌い出しが『月が綺麗』のサビ-3すぎます。

メロディこそ予想とはかけ離れていましたが(もっと明るいと思ってた)、歌詞のイメージは秋田日記で読んだ時から殆ど変わっていません。普通は音源化されたら色々鮮明に聴こえてくるもんなんですけどねぇ。

恐らく言葉の矛先が自分に向けられておらず、共感するにも難しい内容だからだと思います。既存曲では『自虐家のアリー』もまさにそんな感じでした。

故に雰囲気を楽しむような、コーヒーやワインのような嗜み方をする楽曲になりそうです。


内容は、旧約聖書ニムロドという優秀な猟師が登場したのが元ネタらしく、敢えて間抜けな人を「ニムロド」と呼んで皮肉るスラングが英語にはあるようです。つまり「画伯」と似たようなものですが、こちらの方が悪意に満ちた印象を受けます。

まあ秋田さんに応援してもらえるなら大丈夫っしょとか思っちゃいますけどね。笑 そうなると本名は別にあるってことなんでしょうけど。

大きなニムロド 身体もいずれそれに似合うよ

名前負けしないようになるよ、ってことですかね。「みにくいアヒルの子」っぽくも思えてきますね。

とまあ童話の応援歌みたいな印象ですが、僕の中ではまだまだ考察が不十分な曲なので、また何か思い付いたらどこかでつらつら語るかもしれません。

変わらぬものを変えるのが そう信じる者だけなら
愚かさも時には強さになる もしかしたらだけど

根底の意味は「必死に生きるのは得てして無様だから 人に笑われても気にすんな」から変わっていないと思うんですけど、火種の「選んだのは僕だ」然り、やっぱり言い回しが明るくなっているんですよね。

というかこの歌詞「チ。」に当てはまりすぎてます。同じようなフレーズがコラボ新曲にも含まれているかもしれません。


なお、僕の音域でもギリ歌えそうなのが唯一この曲だったので、長期的には一番可愛がることになる予感がしています。


『かつて焼け落ちた町』

かつて焼け落ちた町

かつて焼け落ちた町

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amazarashiとしては『奇跡』『ハレルヤ』『あんたへ』『空に歌えば』『月が綺麗』に続く6曲目のイントロがない曲。(何か忘れてたらごめんよ)

そしてAメロとサビの2箇所に、違うメロディで曲名が出てくる『ヨクト』のような希少性も持ち合わせています。


あとは的中も何もそのまんまですが、本当に青森空襲がテーマの楽曲でした。調べて初めてそれを知るという過程も完全に秋田さんの轍を見る人です。

「ぼぁーくーらーがー」とかサビの裏声とか、シンプルに歌声好きぴポイントが散りばめられていますが、内容がそれなりにシリアスなので鬼リピしたい!とはなりづらい曲なんですよねー。

僕らが頭を抱える 人生という旅路は帰り道 死ぬまでの

この歌詞で思い出すのは、夕日信仰ヒガシズムのライナーノーツ内『穴を掘っている』の解説で出てきた「人生は自分の墓穴を掘っている様なもの」という表現です。

一概にネガティブって訳でもないですが、最終的に死が待っていることをもとより受け入れている感じがなんか…いいんですよね。(語彙力の敗北)

あの人生観が健在だと知れたことで、amazarashiの歩みもまた地続きであると再確認できるような気がして僕は嬉しく思います。


他にも“焼け落ちる=日が沈む”っぼい雰囲気も歌詞中にあったり、サウンド面での疾走感のタイプが『街の灯を結ぶ』っぽいなと感じたり、個人的に「夕日信仰ヒガシズム」を彷彿とさせる要素が多い曲です。


Cメロの「それが僕の親父の親父で」はサラッと奇跡奇跡。ノンフィクションフィクションは別として、世界のどこかでは何度かあり得たであろう光景なので、ついつい思い耽ってしまいそうな歌詞です。


とまあ色んな角度から言いたい事が溢れてくる楽曲でしたが、付属詩もシュールで読みごたえがあって良かったです。ツッコミ不在な感じが完全にツボ。ああいう小説があったら定期的に読みたくなっちゃいます。

『アダプテッド』

アダプテッド

アダプテッド

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期待を裏切らない秋田日記の古株。『ラブソング』に肉薄する単語羅列で、とにかく浮かんだ単語を手当たり次第に詰め込みました的な勢いがクセになります。

Adapted!!ってネイティブ発音なのとか、「ただ酔っていアダプテッド」の文字数ゴリ押しとか、「とおりゃんせ」「いとおかし」といった恐らく一番ふざけたであろう言葉が曲中最高音だったりとか、従来のamazarashiとは一線を画したぶっ飛び具合が魅力的です。ただしライト層にもヘビー層にも賛否両論にはなりそう。


秋田日記での公開は2015年まで遡りますが、少なくとも1番の歌詞は一字一句同じだったので、メロディやリズムも殆ど当時の構想通りってことなんでしょうか。こんなの(褒め言葉)を6年半も温めてたという事実が面白すぎます。


冒頭のフレーズで思い出すのは『エンディングテーマ』のCメロでした。時系列的には秋田日記のアダプテッドが起源なんでしょうか。

失い続ける事で 何かに必死になれる力が宿るのなら
満たされていないってのは 幸せなのかな だとしたら 今の僕はきっと 幸せなんだな
なのに
心が痛いよ 涙が止まらないよ

同じ思考回路でも噛み締めるエンディングテーマ、さらっと流すアダプテッド。それぞれ印象が全然違って別の良さが感じられます。こういう過去の名言を別角度でもっかい叩き込んでくるのが多いんですよね今回のアルバム。

僕の中で名曲だと名高い『命にふさわしい』『ロングホープ・フィリア』なども割と過去の名フレーズの継ぎ接ぎが目立つので、自ずと今作が名盤だということを暗示しているように思えてきます。

『戸山団地のレインボー』

戸山団地のレインボー

戸山団地のレインボー

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曲名だけ発表された時点ではぶっちゃけ一番埋もれていましたが、秋田日記でデビュー当時だと言及されて一転『火種』の次くらいに楽しみな曲に。

前作の『抒情死』くらい、アルバムの核となっているであろうポジション。Aメロのメロディと韻踏みと歌声が可愛くて好きです。サビのメロディはそこはかとなくもう一度。


『かつて焼け落ちた町』に引き続き、Aメロとサビの2箇所でタイトルが登場するパターンでした。僕死のようにAメロとサビの旋律がオクターブ違いでシンクロしていた面影もあります。こう見えてレアな構成の曲です。

あとAメロで終わるのも『古いSF映画』『性善説』『名前』『バケモノ』『とどめを刺して』『鴉と白鳥』に次いで7曲目です多分。(意外と多いなあ)


「青森じゃ数年に一度の」「バイトも辞めて失くした退路」のメロディに聴き憶えがあって、「他に行きたい場所があるんなら」というフレーズは思い出して、それがどの曲だったか自力で引っ張り出すのに1分くらいかかりました。どうだっていいか。


僕の中でこの曲の株が爆上がりしたのはTwitterでとある説を見かけた時です。

サビ毎に登場する「〇〇、〇〇も不可欠な色彩」というフレーズが計6色。そして「希望を足せば僕だけの色彩」で7色が揃うらしいですね。

それまで脳内では絶妙に繋がっていなかった“色彩”と“レインボー”が完璧にハマった瞬間でした。伊達にレインボー取り入れてなかったんだなあ…。

苦悩、苦痛、不平、不満、失意、挫折、そして希望。確かに“amazarashi色”ってこういう色のイメージかもしれません。


それにインスパイアされて「じゃあ音階も7音だったりしないか」って数えたらド#・レ・ミ・ファ#・ソ・ラ・シで本当に7音じゃん!と舞い上がったは良いものの、どうやらそれは音楽的にオーソドックスな型らしかったので、これマジでどうでもいい一文です。←


『空白の車窓から』の感想文では「今が何章なのかは分からないけど新章の幕開けだね」的なことを書きました。

“デビュー当時”であるこの曲が「序章からやっと抜けたところ」らしいので、じゃあ具体的にいつのことなんだろうという疑問が次に浮かんできます。

僕がいつの間にか備えていた知識によると、秋田さんは「あんたへ」のリリース前くらいにむつ市から青森市へと引っ越しています。(その後は家凸まで同じ家だった?)

その辺を調べてみると、2013年5月31日に渋谷公会堂で「最近むつ市から引っ越した」と言っていた、という証言をゲットできました。

ねぇママ時代をデビュー当時と捉えるのは無理があるし、ロッキンのインタビューではそれが「10年以上前」だったと明言されています。

となればむつ市の前に青森市に住んでいた時期があったと見て良いはずなんですけど、あまざらし時代まで遡るとやっぱりむつ市って書いてあるんですよね。


つまり、僕がかき集めた情報を整理するとこういう仮説が成り立ちます。なかなか引っ越してますね秋田さん。

むつ市(あまざらし)
青森市(メジャーデビュー当時)
むつ市(〜ねぇママ)
青森市(〜家凸)
青森市??(自宅ライブetc.)

というか歌詞考察の一環にしてもご本人が見たらめっちゃキモがるやつかもしれない…🙏

たかが太陽光の反射に ほだされて定まった決意じゃねえ

リリース前にも書きましたが、“レインボー”という割とamazarashiっぽくないワードチョイスにはずっと違和感を抱いていました。心のどこかで待っていたひねくれ歌詞を見届けられたので僕は満足です。

失敗や困難だらけの僕らだから 僕らだけの景色を描けるはずだよな

僕がamazarashiで一番愛してる「〜でもそれは果たして僕なんだろうか」がこれまたポジティブな言い回しで再登場。

あの時点では仄めかす程度だった希望を、今回は惜しみなく歌い上げています。同じテーマの言い回しで秋田さんの現在地が分かるのは何とも面白いシステムですね。


『アオモリオルタナティブ

アオモリオルタナティブ

アオモリオルタナティブ

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現時点で僕が最も過小評価しているであろう曲です。アルバム内で最後に聴いた新曲なのもあってか、今作で唯一、未だイヤーワーム期が到来していません。


『夕立旅立ち』のようなスッキリした曲かと思いきや、曲調もアレンジも靄に覆われたようで気だるそうですし、キラーチューン狙いじゃなかったのが意外でした。故に思ったほどラスボス感もなく、今のところは「戸山団地の次の曲」という印象止まり。

デモ音源がお披露目されたと聞いてからずっと楽しみにしていたので、これは我ながら意外な心情です。いくら粒揃いのアルバムとはいえ、この曲が一番埋もれることになるとは夢にも思いませんでした。

これに関してはデモ音源やラジオで僕が聴く順番がズレていたら未来も変わっていたのかもしれません。前作で苦手意識のあった『死んでるみたいに眠ってる』ですら半年以内に悪くはねえなぁ期がやってきたので、きっともう少しの辛抱なんだと思います。(?)


ゴリゴリに素晴らしい歌詞なのは秋田日記から知ってるのでいいんですけど、楽曲全体としても早くライブで化けた姿を観て手のひらを返したいですねー。

トラブったら入力から辿れ 最初に言われた 間違いなかった

曲中で唯一、なんのこっちゃ分からない歌詞です。笑 (文脈的にギターの話??)

ひとまず僕は「初心忘るべからず」という解釈をしています。この歌が生まれた経緯も大体そんな感じですし。

くたばる為に生きた訳じゃねえ 歩いた道程を
負けや恥と吐き捨てるな それこそが君の成り立ちなんだから

僕が某曲で「鋼鉄より人肌」の次に好きなフレーズ「途絶えた足跡も旅路と呼べ」の生まれ変わり。2番Bメロ〆というポジションまで一緒です。

鬱屈も増幅すればアートたり得る

これまた「劣等感も自己嫌悪も 底まで沈めたら歌になった」みたいなもんです。『リビングデッド』をラジオで初めて聴いた時から印象付いていた歌詞なので感慨深いです。


ところで、SNSを見てるとこの曲の略称だけバラバラで面白いですね。

僕は無意識に「アオタナティブ」と呼んでいますが、ハイドロポンプに則るなら「モリタナ」が定番になりそうです。


『1.0』

1.0

1.0

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新曲ブーストも落ち着いてきた今日この頃、結局アルバム最強はこの曲だと思います。ロディアスなお経が最高にamazarashiです。とにかく口ずさんでいます。

特に「心さえなかったら」の裏で流れるストリングスのように、主旋律が平坦なサビの後ろで引き立つオルゴール風のリフレイン?が愛おしいです。

アウトロに至っては好きすぎて最寄り駅の発車メロディにしてほしいくらい。


初速がぶっ飛んでいたのはボイコットの『そういう人になりたいぜ』もそうなのですが、「君を守る為世界を終わらせてもいいぜ」とか非リアには眩しすぎて、最初こそ微笑ましく鬼リピしていたのがいつからかめっきり聴かなくなっていました。

同じく心握り潰す系であるこの曲も同じ道を辿るかと言えばそうでもなさそうで、僕の中ではむしろ『命にふさわしい』『たられば』のような永久崇拝ルートに進んでいる気がします。

明暗を分けたのは、曲中で繰り返される「見つかりますように」という祈りの言葉だと思います。1を持っていてもいなくても何らかの立場で共感できるのが大きいのかも。


ほんとのとこ大まかな感想は先月語り終えたので、詳しくはそちらを見てもらえるとm(_ _)m

dalek-amz.hatenablog.com

『空白の車窓から』

空白の車窓から

空白の車窓から

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amazarashiの中でもとりわけ供給の少なかった眩しい光が今ここに!

元はといえば秋田さんの歌声に惚れてamazarashiにハマった僕は、そもそも暗い歌(便宜上の表現)固執しているわけではなく、人間なので露骨に明るい歌が聴きたくなる瞬間もあります。久々にその需要に応えてくれる一曲が手に入りました。(ハルルソラ昔から好き)

歌詞だけ見るといつも通りのネガティブな単語や展開も散りばめられていますが、特にサウンドの開放感が今までにない次元です。


この曲もまた、アルバムを聴く前に感想文を書いてスッキリしたのでこちらもよろしくお願いします。

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アルバム全体として


Aメロから惹きつけられる曲ばかりで、暇さえあれば韻を踏み、歌声はよりエモーショナルに。

サウンドも洗練されてより広い層に勧めやすくなり、玄人ファンがニヤける秋田日記の詩やデビュー当時を歌う歌も揃っていて、秋田さんもベストアルバムの選曲に困ってしまいそうな充実っぷりです。

新曲が聴ける興奮はいつだって変わりませんが、今作は“ニューアルバム”という作品としては真面目に最高傑作クラスだと思います。


という大前提を書いたところで、とりわけ僕が触れるべきは「この部分〇〇と一緒だ!」が著しく増えた点でしょう。

各曲の感想で取り上げまくった通り、アルバムを通して新旧色んな楽曲が想起させられ、それがキッカケで既存曲を聴き直す機会が増えました。

amzライフが更に充実するようになったのは絶対的に良いことなんですけど、悪く言えばそれは“ネタ切れ”とほぼ同義であって、実は秋田さんにとっては痛いところなのかもしれません。


思えば「でもそれは果たして僕なんだろうか」「せめて特別な人間になりたかった」「一日では無理でも十年を経たならどうか」辺りを境に、本当の意味での衝撃は食らわなくなってしまったような気もします。

それ以降は秋田さんの考え方を学習し続けているのもあって、想像の範疇で「そうきたか」を楽しむのが主になっているというか。

飽和状態というか、頭打ちというかカンストというか。はたまた焼き直しというか集大成というか。

「秋田さんにしか思い付かない言葉」から「秋田さんが歌うことに意味がある言葉」にシフトしているというか。


閑話休題


メメモリの弱点であった後半のマンネリやボイコットで目立った流れのぎこちなさは、アップテンポな新曲がバランス良く差し込まれることで解決されました。

今作のポエトリー曲の少なさは、ポエトリーで強引に流れを変えなくても良くなったということの裏返しなのかもしれません。寂しいもんは寂しいですけどね。


そして『少年少女(2021)』でスイッチが入ったのか、CD音源の荒々しさにも最近は拍車がかかりつつあります。

少し前まではCDがお手本、ライブに参戦して初めて覚醒した歌声を浴びられるものでした。ロストボーイズやアダプテッドなどで歌声が裏返っていましたが、そんなの数年前なら有り得なかったと思います。お得。


逆に一点だけ、ボイコットの方が凄かったと思うのがCメロの爆発力です。

「カーラジオのボリュームを上げてーー」
「それが君でーー」
「そしたら僕の!声も!失くしてた!」
「そこで僕は凍えて死んじまったっていいぜ!」

そりゃあこいつらには勝てないよなと思う反面、今回はAメロや1番だけで充分満足しているからそう感じるのではないかとも思えてきます。

とにかく曲の最初を聴かせるのがサブスク時代を生き残るコツらしいので、時代に合わせた正当な進化とも言えるんじゃないでしょうか。

これに関しては完全に僕の主観なので、amazarashiの思惑や一般的な評価とは全然違うかもしれませんけど…。


特典のボイコットツアーの記事に続きます。人を選びそうなタイトルですが、興味があればこちらから是非🏋️‍♂️

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