雨曝しな気持ちは言葉にするべきだ

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amazarashi大好き系ブログ

「仮説人形劇 アンチノミー」感想&考察&英詞の再翻訳

こんばんは、ダーレクです。


西暦2023年2月3日21時、待ちに待った「仮説人形劇 アンチノミー」が上演されました。

youtu.be


公開時間の予告がガバガバだったのもどうでもよくなるくらい、心底に染みついたニーアらしい感情が僕の満足感を示唆してくれています。


『命にふさわしい』同様に物語と歌詞の繋がりを理解することで印象が変化しており、アニメのEDで抱いていたアンドロイド視点に加えて、今回の仮説人形劇でフィーチャーされた機械生命体視点でも楽曲のメッセージを受け取れるようになりました。

やっぱりタイアップはこの楽しみ方が至高ですね。今後も知らない作品とタイアップした際は、楽曲を十分に聴き込んでからその世界に飛び込んだ方が面白そうです。秋田さんの原作再現力を前提にできる信頼感たるや。


人形劇から思ったこと(※ゲームネタバレ有※)


おかあさんの言う通りにしたり、目や耳を塞いだり何かと『性善説』がチラつく物語でしたね。


機械の声なんて別に何でもいいのに、どこぞの赤さんみたいにネタに走るんじゃなくて、敢えてのガチ子役で未熟さを強調してくるの怖くないですか。ググってみたら僕のスマホデビューと1日違いで生まれた子だったのも怖かったです。

本編のような心休まる瞬間もなくひたすら心が握り潰される展開だったため、第一印象では「こんなMVをこれから愛していけるだろうか…」という不安が混在していました。

結果的には興味深いギミックの数々で周回視聴を楽しめたので大丈夫そうです。


本編1周目の中盤で明かされた、機械生命体が生みの親であるエイリアンを絶滅させていたという事実。それに至った経緯をこの人形劇で描いていたこともクライマックスで明らかになりました。

……と思ったのも束の間、その後のモノローグでこの人形劇が何度も繰り返されていることや、それに伴っておとうさんとおかあさんも作り直され続けていることが判明。オツベルと象を超越し始めます。

初見のエンドロールで107thが流れ始めた時は「ヒェッ…」って曲が頭に入ってこなくなりました。


必要だから作り直すのに、その度に殺してしまうというアンチノミー。「一つを手に入れて一つを失くして いつも何か足りないって泣いている」をめちゃくちゃに解釈したみたいな無限ループの完成です。

失敗を繰り返している怖い話といえば「流浪のカップル」が印象的ですが、それとも似て非なるような後味の悪さがあります。


他にも回転灯や工場廃墟感など『命にふさわしい』MVとの関連性も謎に包まれていて。ひょっとして最後に倒れていた観客はおとうさんとおかあさんなのでしょうか…?

初回版特典の「ストーリーのネタバレが含まれます。」では最低限エイリアンの話には触れられていそうなので、メイキングやインタビューで少しでも理解が深まるのを願うばかりです。

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あとはちょっぴり蛇足ですが、個人的に言及せざるを得ないシーンが第三幕〜第四幕にありました。

「アツイ…アツイ…アツイ…」
「皆が悲しいのは、悲鳴が聞こえるからじゃないかな?」
「不満を言う口さえ無ければ、そんなこと考えなくていいんじゃないかしら?」

そんなセリフの数々から脳裏にフラッシュバックしたのは、我らが「ドクター・フー」シリーズ10、第11話のワンシーン。機械の兵士に改造される途中の患者が「痛い…痛い…」と発していたところを見回りナースにミュートされてしまいます。おかげさまで初見時のトラウマを再び味わうことができました。

とりわけこのエピソードは救いのなさが飛んでいるので、それと似ているニーアシリーズにもハマるべくしてハマったような気がしてきます。

youtu.be


そういえば先日の再放送を観ていて気付いたのですが、アニメ第2話でも語られていた原作2周目に登場する絵本の内容は、人形劇のラストシーンとも酷似していたんですね。

お父さんを殺しました。

お母さんを殺しました。

お父さんを殺しました。

お母さんを殺しました。

その手には、成長の喜びと……

一人になった孤独が、

冷たく握られていました。

アンチノミー』があって初めて成立する人形劇ということは、裏を返せば「NieR:Automata」があって初めて成立する人形劇でもありますもんね。

DLCプラトンがアニメで大きく取り上げられたり、ここに来て色んな角度から色んなニーアの世界を楽しみ尽くせる時代がやってきました。これだから世界観がしっかりしている作品は噛んでも噛んでも味が出てきてやめられません。


天使文字と16進数の解読


MVに出てきた2種類の意味不明な暗号。どちらも仕組みが分かれば簡単に解読することができます。

とりあえず「第〇幕」のタイミングで表示されていた「天使文字」の話から、というか結論から貼っておきます。


※MV内の登場順です。(くっっっそ重要)

①DAIGOMAKU
②DAIYONMAKU
③DAISANMAKU
④DAINIMAKU
⑤DAIICHIMAKU
「IKIRO」


ご覧の通り、劇中のナレーションでは「第一幕→第二幕→第三幕→第四幕→第五幕」と進行していたのに対して、テロップ上では「第五幕→第四幕→第三幕→第二幕→第一幕」と何故か逆から流れていたことが判明しました。

かと言って逆から読んだ瞬間に全てが繋がるわけでもなかったので、整合性の取り方には疑問が残ります。人形劇がループしているからストロボ効果みたいに切り取れば逆から上映されてるようにも見えるね〜ってこと?

色々考え込んだ末、内なる声の「IKIRO」と同じ文字で「第〇幕」も表されているので、機械生命体が少しでも幸せになれるように、感覚や感情を取り戻していける順番にその声が書き換えた。というのが今のところ導き出した仮説です。


あとなんか③〜⑤だけ天使文字が大きめに表示されているんですけど、これも何かの境界線アピールなんでしょうか。一応、機能が制限され始めるのは②→③のタイミングですが…。

核心に迫るガチ考察は僕の守備範囲ではないので、この先は僕以外の誰かに託したいと思います。それともこれまたメイキングなどでヒントが明かされるんでしょうか。


ともあれ、続いては『アンチノミー』ラスサビ後半で突如として変換され始めた「16進数」の解読に移りましょう。これも天使文字と仕組みは原理は同じで、0〜Fで表された数の羅列を対応する文字に組み替えていきます。よくわからんけど4文字区切りで1文字が成立するっぽいです。(お世話になったサイト)

00310030003600740068
106th(105th Performance)
005000750070007000650074
Puppet(Puppet Show)
00430068006100720061
Chara(Character Design/Puppet Creation)
004100730073006900730074
Assist(Puppet Making Assistance)
0070006500720066
perf(Puppet Performers)
004e0061
Na(Narration)
004100630063
Acc(Accordion)
007300740061
sta(Stage Design)

0076006900640065006f
video(Music Video)
00700068006f0074006f
photo(Director of Photography)
00630061006d006500720061
camera(Assistant Cameraman)
004c006900670068
Ligh(Lighting Director)
006700610066
gaf(Gaffers)
006700720069
gri(Grip)
0073006500740064
setd(Set Design)
007300650074
set(Set)
007300740079
sty(Styling)
006500780074
ext(Extras)

項目は上記の通りです。例えば「Character Design」と「Puppet Creation」はどちらも「Chara」に訳されているなど、言葉自体は割と簡略化して表示されていました。

16進数化されているのは「105th Performance」のクレジットですが、変換後に「106th」へとすり替えられていた理由はよく分かりません。天使文字と同様に今後の考察対象になりそうです。


エンドロール右側の名前欄には、スタッフの性別に合わせて以下のいずれかが当てはめられているようです。

304a3068304630553093
おとうさん
304a304b304230553093
おかあさん

今までゲームのDLCやアニメ第2話の扉の16進数はスルーしてきてしまったので、いざ自分で謎を解いてみるとめっちゃ気持ちよかったです。ドーパミンごちそうさまでした。


久々のセルフ再翻訳


オフィシャル英語字幕を見つけた際に時々やってるネタ。秀逸なフレーズからそうはならんやろって訳まで色々発掘できるので結構気に入ってます。いつも通りほぼ直訳です。

Don't carry any emotions
(感情を持つべからず)
It will probably make it hard for you
(それは恐らくあなたにとっての困難になるだろう)
Don't love anyone
(誰かを愛すべからず)
Having someone to protect will make you weak
(守る人を持つことはあなたを弱くするだろう)
You will probably regret it
(あなたは恐らく後悔するだろう)

We smile from happiness
(僕らは喜びで笑う)
We cry from sadness
(僕らは悲しみで泣く)
I wonder if we were programmed to do this from the start
(初めからそうするようにプログラムされたのかな)
But I can't doubt my heart that cries for the pain
(だけど僕は痛みで泣く僕の心を疑えない)

Abandon your meaning, have your own will
(意味を捨てよ、あなた自身の意志を持て)
Survive Survive Breath
(生き延びよ 生き延びよ 息をせよ)
“I'll come back soon” is the last word
(「すぐ帰る」が遺言)
Antinomy Antinomy
(アンチノミー アンチノミー)
A bug in the heart
(心のバグ)
Resent them as a human everything that crushes our emotions
(人として奴らに憤れ 僕らの感情を押しつぶす全て)
Mechanized tears
(機械仕掛けの涙)
Who owns this shaking heart?
(この震える心を持っているのは誰?)


Don't make your own choice
(あなた自身で選択するべからず)
Peace wavers by innovation
(革新によって安寧は揺らぐ)
Don't show mercy
(情けをかけるべからず)
You will be disturbed the myriad shades between black and white
(あなたは黒と白の間の無数の色調に困惑するだろう)

Many a time, the world repeats itself
(何度も、世界は繰り返す)(←!?)
If a reply is the only thing required, even a machine can do that
(もしも返答だけが必要とされるなら、機械でさえそれができる)
If the ambivalence of my own can serve as proof of human
(もしも僕だけのアンビバレンスが人の証左としての役割を果たせるなら)

Abandon your meaning, have your own will
(意味を捨てよ、あなた自身の意志を持て)
Survive Survive Breath
(生き延びよ 生き延びよ 息をせよ)
You kill yourself to live
(生きる為にあなた自身を殺す)
Antinomy Antinomy
(アンチノミー アンチノミー)
A bug in the heart
(心のバグ)
Resent them as a human everything that crushes our emotions
(人として奴らに憤れ 僕らの感情を押しつぶす全て)
Mechanized tears
(機械仕掛けの涙)
Who owns this shaking heart?
(この震える心を持っているのは誰?)


Don't carry any intelligence
(知性を持つべからず)
If you have it you will end up finding the truth
(もしも持ったらあなたは真実を知ってしまうだろう)
What's the difference between you and me?
(君と僕の違いは何?)
Our joy and pain are so alike
(僕らの喜びと痛みはとても似ている)
Because we are alike, do we crave for each other?
(似てるから、僕らは互いに渇望する?)
Or do we hate each other?
(それとも憎しみ合う?)
Come to think of it,
(そういえば、)
this hatred is very close as well
(この憎しみもよく似てる)

“Tearful voice I can't let go of your hand, your hand; it's still warm”
(「涙声放せないあなたの手、あなたの手、まだ温い」)(←??)
Born as a corpse
(屍として生まれる)
Antinomy Antinomy
(アンチノミー アンチノミー)
A bug in the world
(世界のバグ)
Resent them as a human everything that crushes our emotions
(人として奴らに憤れ 僕らの感情を押しつぶす全て)
Mechanized tears
(機械仕掛けの涙)
Who owns this shaking heart?
(この震える心を持っているのは誰?)


用例を知らなくて戸惑ったのは“carry(持つ)”“wavers by(揺らぐ)”の2つです。それぞれ概念もキャリーできること、そのままで受け身みたいに使えることを学びました。

ちなみにこの場合の“carry”は古臭い表現という説があるようなので、“Don't〜”は「〜べからず」で統一してあります。


続いてツッコミどころを2点ご紹介しましょう。


①「問」消失バグ

Many a time, the world repeats itself
(何度も、世界は繰り返す)

直後のフレーズ「返答だけならば機械にだってできる」の伏線というか、バックグラウンドを描いた重要なポジションなので、「問」ガン無視でただ世界が繰り返されてるって解釈はいくらなんでも違う気がします。

素直に「the world repeats numerous questions」とか、世界で繰り広げられてる感を出すなら「In the world, there are numerous questions repeated」の方がマシだと感じました。


②「涙声」自己申告バグ

“Tearful voice I can't let go of your hand, your hand; it's still warm”
(「涙声放せないあなたの手、あなたの手、まだ温い」)

僕の再翻訳も何言ってるのか分かりにくいと思いますが、何故かここでは「涙声 離せない あなたの手 あなたの手 まだ温いんだ」を一つのそういうセリフとして訳されています。

流石に「涙声なう」って自分で実況するとは考えられないので「In a tearful voice, “I can't let go of…」にした方がしっくりくるような…。


一方で「深ッ」と思った表現も幾つかありまして。

If the ambivalence of my own can serve as proof of human
(もしも僕だけのアンビバレンスが人の証左としての役割を果たせるなら)

「迷い」に相当する“ambivalence”は「ある対象に対して、相反する感情を同時に持ったり、相反する態度を同時に示すこと。」を意味するそうで、『アンチノミー』という楽曲とも非常にマッチしたセンスの塊ワードとなっています。

性善説の英訳(all humans are born good)ばりに説明くさくなるのもアレだったので、ここでは素材の味を生かしました。


もう一つ、英訳を通してようやく理解できたのがこちら。

Because we are alike, do we crave for each other?
(似てるから、僕らは互いに渇望する?)
Or do we hate each other?
(それとも憎しみ合う?)

今まで頭空っぽで聴いてたので「似てるから求め合う? 憎しみ合う?」が絶妙に理解できなかったんですけど、アンドロイドや機械生命体が「似てる」という発端から「求め合う」「憎しみ合う」のどちらに転ぶかな?という問だったんですね。(そりゃそうだって思われてそう)

ここから色々浮かんだんですけど大概ネタバレなのでまた今度にします。


英訳が意味を成しているか理解するためには、自ずと原文をゴリゴリに理解するプロセスが必要になり、成し遂げた先では楽曲の情景がより鮮明に見えるようになっています。何かを考察するのもそれを欲する心理からですよね、多分。

本来、英文を何でもかんでも日本語に戻すのはトーキックばりの初心者ムーブですが、細かな表現の違いを楽しめれば英語学習に目覚めるキッカケになるかも?なんて思ったり。