こんばんは、ダーレクです。
遠い昔、ボカロから音楽を知り始めつつも“好きなアーティスト”という概念を持たなかった頃の僕は、変拍子の楽曲にとりあえず興味を抱いていました。
旧友に布教された『Leia』に始まり、最古と言われる『メロディック妹メタル』や当時の最高音を誇る『L'azur』など、要所で巡り合うボカロ曲がやたらと変拍子尽くしだったのが一因だと思っています。
のちのちamazarashiにハマり散らかすことで、僕が変拍子と触れ合う機会はめっきり少なくなってしまいました。
言わずもがな「4拍子で歌う楽曲」が一番多いバンドですし、変化球にしてもイントロの一芸で燃え尽きたり、曲中で3〜4拍子を行き来するのが関の山。(無題やハルキ、ムカデや空に歌えばなど)
まあ、こうやってシンプルな構成に偏るのも当たり前なんですけどね。拍子が複雑になるほどキャッチーさを欠いた初見殺しになってしまうため、メジャー音楽での乱用は褒められたものではないでしょう。
しかし、秋田さんと出羽さんはそこに抜け道を確保していました。
amazarashiには古くから“短編ポエトリー曲”という区分があります。どれも1分半〜3分半ほどの短尺で、歌詞カードに“もう一つの詩”を持たないのが特徴。(便宜上の呼称×2)
前半:メロディ無しのポエトリーリーディング
後半:メロディ付きのサビ
という構成が王道であり、特に近年は作編曲者の遊び場となっていることもしばしば。スマブラのDLCキャラみたいに、何かと個性を尖らせた楽曲が多くリリースされています。
一方で「伴奏のリズムがよく分からなくても大丈夫」というポエトリーリーディングの特性上、そういえば僕も分析することを長らくサボってきた分野でした。
『明日には大人になる君へ』を貫く7拍子と『月光、街を焼く』のサビを形作る5拍子、今思えばたったそれだけの知識でamzの変拍子をコンプリートした気になっていたのです。
そんな態度を改めて、このたび真面目に短編ポエトリー曲を研究してみたところ、素人には刺激的すぎる拍子の世界を垣間見ることになりました。
全楽曲の拍子を言語化するのは相当先になる見込みなので、今回は「一般的な拍子にはカテゴライズできなかった短編ポエトリー曲4選」をご紹介します。
(変拍子に興味こそあれど音楽知識が追いついていないため、素人のボキャブラリーで解説をゴリ押している部分があります。)
不安定すぎる拍子を持つ楽曲
『月光、街を焼く』
2017年のシングル「空に歌えば」のカップリング曲。
楽器や細かいパターンは都度違えど、基本的には以下のようなビートを刻みながら進行しています。まずはこれを1回分の“8拍”と定義させてください。
イントロの“ポッカーン”から1、2と数え始めた場合、
8→5→8→4→8→8
こんな流れでポエトリーに入ります。初っ端から2箇所ほどフェイントがありますが、意外にも4拍子ベースで数えることができるみたいですね。
ちなみに朗読が始まってからは、秋田さんをガン無視してビートに耳を傾けていないと秒で迷子になります。
「カーテンから漏れる月明り〜」
8→8→8→8→8
「乱射する空想は実感をかすり〜」
8→8→8→8→8→4
やがて朗読が一区切りついたら間奏に入るのですが、左耳からアコギリフが聴こえ始めるタイミングで3拍子に変化します。完全変態でいう蛹みたいなフェーズですね。
6→6→6→6→6→6→6→5
満を持して突入したサビは5拍子で固定。amazarashiの変拍子では唯一メロディが付いている箇所です。
ちなみに後述する3曲は拍子だけでなく、テンポまで流動的になるので余計ややこしくなっています。
『俯きヶ丘』
2023年のフルアルバム「永遠市」の8曲目に収録。昨年は“調”の難解さで僕の耳を煩わせてくれました。
『月光、街を焼く』のような一定のリズムパターンを繰り返す訳ではありませんが、恐らく数えやすさ的に5拍子ベースで進行していると思われます。
これまたイントロで最初に響く“ポンッカッ”から数え始めるとして、
5(遅延あり)→5→5→3
で語り出します。初っ端の5カウント目に謎のラグが発生しますが、ここでは見逃すものとします。
「いつかがまだいつかであったとき〜」
5→5→5→5→5→3
「そういう風にできてないって〜」
5→5→6
やがて若干スローテンポになり、“ブオン…”って遠心力の音が6回。
その後のキラキラタイムに至っては、拍子を掴むための指標が見つからないのでお手上げです。どうせ蛹フェーズなのでそっとしておいてあげましょう。
ドゥルルルルパンパンシャーン「枯れて咲く〜」からは安心安全の4拍子。発売目前のライブ映像も楽しみですね。
もはや測定不能だと思う楽曲
『カラス』
2012年のミニアルバム「ラブソング」の8曲目に収録。
4拍子のトゥトゥトゥサークル(サビ)が始まる前にピアノソロを4発挟むのですが、文字起こしをしてもなお決定的な傾向は掴めず終いでした。
ド#・・・・・/レ・/ラ・・/シ〜(12拍休み?)
ド#・・・・・/レ・/ラ〜(13拍休み?)
ド#♪♪♪♪・/レ・/ラ♪♪♪/シ〜(10拍休み?)
ド#・・・・・/レ・/ラ・・/シ〜(15拍休み?)
「しんみりソロパート」「テンポが不安定」「共通の手がかりが4音のみ」という三重苦にボコされています。少なくとも1回目と4回目は同じフレーズでしょうか。
何だかこれに関しては、拍子を突き止めようとする姿勢自体がナンセンスな気もしてきました。(諦めの投稿)
『或る輝き』
2015年の1stシングル「季節は次々死んでいく」のカップリング曲。
これまた後半は4拍子ですし、前半パートのことは説明不要だと思います。無理です。
先ほどの『カラス』と違ってドラムやシンバルが聴こえる分まだマシかと思いきや、テンポが露骨にコロコロ変わりやがって何が何だか解るわけないだろうが。
『ロングホープ・フィリア』の演奏前みたいに、皆思い思いの準備運動を適当に奏でているだけだと信じたいです。信じていいですか?ありがとうございます。
15周年ライブでこの曲ランクインさせて関係者全員泣かせたい。