雨曝しな気持ちは言葉にするべきだ

雨曝しな気持ちは言葉にするべきだ

amazarashi大好き系ブログ

ヴィレッジ→スワイプ→MV、揃いも揃って救い無し、でも新譜こそ生き甲斐、だから感想ここに書きたい

こんばんは、ダーレクです。


※ヴィレッジの重要なネタバレが散らばっています。


スタッフ日記の匂わせから数えても1ヶ月足らず、正式な発表からはたったの1週間で『スワイプ』のお祭りを駆け抜けてきました。爪痕も深かったですね。

しかも“amazarashi本来のうま味”を引き出すような現実世界を描いた楽曲ということで、僕に渦巻く感嘆符も出会いたての2016年を思い出す感触です。

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ところで、3月30日の完成披露試写会には秋田さんも参加されていたんですね。あの日に予定さえ無ければ僕も秋田さんとナモナキヒトできたかもしれないっていうのか…!

からの翌日MV撮影じゃどうりで滑り込み日記も書けないわけです。(にしてもphotosでキャンプ自慢するとかさあ!)


「ヴィレッジ」を舞台挨拶付きで観てきた


レビュアー試写会でタダ観して終わるのは流石にな〜ってところで舞台挨拶の存在を思い出し、公開翌日にフラッと2回目を観に行ってきました。

いつもの感覚でギリギリに着くと、既にMCのお姉さんがソロで進行していて急着席。間もなく始まった登壇タイムで早速コラボレーションソングが仕事を貰っていました。「暮れる〜」からの「喉仏」とか「手」とか言ってたので2番Aメロですね。

歌詞には軽く目を通していましたが、いざ音源化されるとあんなに詰め詰めだったんだな〜というのがこの時点での印象です。曲調も必死に記憶したはずなのに、優と美咲が能を観に行く頃にはさっぱり消し飛んでて途方に暮れました。


クランクインが去年の4月21日なんですってね。どうりで『ロストボーイズ』や『鴉と白鳥』を聴き込んでいたのも合点がいきます。僕にとっては『1.0』に心酔していた時期でもあるので、道程の個人差にほんのり寂しさを覚えたのもまた一興。

amazarashiが好きという設定の許可取りを兼ねるとしたら「七号線ロストボーイズ」発売より更に前から声がかかっていた可能性もある…?


さて、本編で2周目に印象が変わったのは、終盤に美咲がどこかに出掛けようとするのを優が止めて「幸せにできなくてごめんなさい」するシーンでした。

そういや初見では意味深了解〜って受け流していましたが、ちょうど死体遺棄のニュースが流れていて直後にネタバラシも入っていたので、美咲が自首する気だったってことなんですね。

順当に考えたらそりゃそう(彼女が犯人)なんですけど、察しの悪い僕はそもそも「なんやかんや優が耐えきって透は拗ねてどっか行っちゃったんだな」というクソザコ解釈に落ち着いていたので、まんまとクライマックスまで映画に翻弄されていました。酷い顔を転んだって言い訳したのも、村長が変に逆撫でしてまた飛び火するのを嫌っただけだと思ってたし。

そういう頭だからこそダンガンロンパとか最後まで素直に驚けて楽しいんですけどね。(Switch未所持レインコード予約済男)


あとは美咲に迫る際の透(というか一ノ瀬ワタルさん)の笑顔が純粋に愛くるしく感じるという変化も。1周目は恐怖しか感じなかったシーンなのに、展開を知っていれば意外と冷静に観られるもんなんですね。近々お相撲さんの主役もやるみたいで気になってきちゃいました。


amazarashiが主題歌ではなかった理由

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  • 藤井道人×横浜流星って時点で「やっぱり絶対amazarashiさんにオファーしたいよね」
  • エンドロールで秋田さんの言葉に観客の解釈を委ねるのは「青の帰り道」でやった
  • “能”という要素が予め決まっていたから、その余韻・余白をラストに敷き詰めたい
  • 新しい形で何か一緒にできないかな→『スワイプ』爆誕→MVで返すキャッチボール
  • 本編で意味深なまま終わった“穴”もMVに出てくるよ

まあまあ予想通りの経緯でした。ほぼ同じキャッチボールで実はヨコオさんと二股してたのがこっち視点だとジワります。

思えば『心層廃棄物』『海洋生命』ともに「ここはゴミ捨て場」というフレーズがありました。この頃から秋田さんの脳内には霞門村があって、作詞中に自然と反映されていたという考え方もできそうです。

なんならAエンドを迎える土地があのゴミ処理場と似てるような気もしてきました。


それはさておき、このコラボレーションは秋田さんが機転を利かせた時点で勝ち確になったと思うんですよね。

「消費せよ 消費せよ」とか「何でもいいから早く次のをくれよ」とかamazarashiはそういう皮肉り方をしてくると昔から知っていたはずなのに、いざ「記事をスワイプする」という今どきの視点を併せ持って再臨されると2周回って敗北感すら感じないというか…。


そしてやっぱり“主題歌の距離感”で書ける詩ではないんですよね。もしもエンドロールで作品自体をスワイプしていたら、少なからず批判の声も挙がっていたんじゃないでしょうか。どこぞの3作目みたいに。

それこそ「MVでアナザーストーリーを描く」という発想まで揃って、ようやく『スワイプ』という楽曲の世界観が完成したと思っています。世界線によってはMV→スワイプ→ヴィレッジという真逆の生まれ方もありえたんじゃないかってくらい。


『スワイプ』をフルで聴いた感想


結論から言うと、無邪気に喜べないタイプの曲すぎて抱く感情に実感が追い付いていません。

直近の『カシオピア係留所』や『アンチノミー』からは“それでも”をふつふつと感じられたのに、なんなんですか今回のやるせなさは。

そもそも「ヴィレッジ」があー楽しかった!で帰れる映画じゃなかったですし、秋田さんはご丁寧にその温度感までも完全再現してくれたので、あの地獄絵図を無言で観届けた僕が同じようなリアクションになるのも当然っちゃ当然なのです。

最初の数回こそ「新曲うおおお!」のテンションで聴けていましたが、徐々に哀しい歌だと気付くのに伴って胸も締め付けられていきました。でも不景気な地方自治体の匂いに誘われてリピートが止まらないッ…!

スワイプ

スワイプ

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255

ときに最近のamazarashiは「メロディアスにしたい」「韻を踏みたい」という2つの思惑を感じる曲が多いのですが、今回はメロディラインを絞って後者にほとんど全振りしているのが印象的でした。

中でも特徴と言えるのは、サビの歌詞が3回とも一言一句コピペされている点。amzトップクラスの圧倒的文章量からびっくりするほどの金太郎飴です。

普段の秋田さんならサビの型を使い回す場合でも苦し紛れに歌詞の一部を変えてくるはずなので、ここまで振り切ったからには相応の狙いがあったはず。ならばその意図は何だったのか。

僕なりの解釈になりますが、毎日繰り返されるニュースがどれも同じ内容にしか見えないほど心が麻痺していく様子を示唆しているように感じました。そうやって着実に蝕まれていく日々への漠然とした不安が、サビ毎のアレンジの激化にも表れているのかなと。

不景気な地方自治体 おばあちゃんかかる特殊詐欺 週明け上がる水死体 大人のせいで子供死んだり
全て忘れて踊れと怒鳴る祭り囃子 平穏の舞台裏に 出番を待っている死神
市民を殴る警備隊 不正も手当たり次第 砲弾発射の耳鳴り 都市近郊の軍事支配
逃れられぬ町で 僕らせめて夢を見たい 誰もが背負う生き恥 だから濃い夕日の色彩

この中では「おばあちゃんかかる特殊詐欺」が言葉選びの可愛らしさも相まって、ぶっちぎりの人気フレーズとなっていますね。

僕はこのフレーズによって「青の帰り道」のワンシーンを思い起こされました。そういやあれも横浜流星さんでしたし。


サビのもう一つの特徴として、『吐きそうだ』のように秋田さんの低空飛行にユニゾンを併せて進行している点が挙げられるでしょう。初聴では歌詞を見ながらでもBメロを疑ったレベルでした。

じっくりコトコト焦らされることで、控えめな最高音(mid2G)が一瞬顔を出すだけでも「ああ…もっと…!」って病みつきになってしまうんですよね。

吐きそうだ

吐きそうだ

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255

amazarashiの地声最高音はmid2G#/hiAの曲が大半を占めているはずが、今年の新曲は4曲ともmid2G以下に落ち着いています。それどころか今回の『スワイプ』では秋田さんの地声最低音が更新されるというビッグニュースまで。

1番「多重債務者の行く先」2番「抜け出すの微かな希望」3番「いつか罪悪で血まみれ」のユニゾンパートで人知れずlowDが炸裂していたのです。(音響弄らないとほぼ聴こえない)

主旋律でないとはいえ『つじつま合わせに生まれた僕等』『リビングデッド』『夕立旅立ち』の3曲で確認されていた従来の最低音lowF#から、更に鍵盤4つ分の大幅更新です。去年の今頃も『火種』のハモリで地声最高音hiBを叩き出したばかりなのに、秋田さんのご乱心は留まるところを知りません。

この辺になると流石の僕でもボソッと発声するのがやっとで、もはや「amazarashiの低音なら余裕だわ」ってイキれなくなったことへの寂しさをちょっぴり感じています。


こだわりのサビを抜けると「暮れる 暮れる 暮れる陽を止めろ」のリフレインですが、誰もが「暮れる〜」のタイミングどうなってんだよ!と思ったことでしょう。ティーザーの切り取り方もミスリードになっていましたし。

楽器隊がご丁寧に拍の始まりを教えてくれるのも余計なお世話だし、なんやかんや2番に入る時はぴったり収まっているのが絶妙にムカつく変化球です。

まさか最速で再犯するとは…

結局この「暮れる陽を止めろ」ってどういう意味なんでしょう。700日のヴィレッジなどでも触れられていることから重要な意味を持つフレーズなのは間違いなさそうですが…🤔

『ヒガシズム』では「世々、最小単位の死として ただ身代わりに陽が沈む」と歌っていて、それを基準にすると「最小単位の死すら認めるな」→「今日の出来事を世間に忘れさせるな」くらいまで噛み砕いていいんですかね?

それはつまり「今日をスワイプ」の対義語を意味しているようにも見えます。最後の最後に「暮れる陽を止めろ」が引きずり下ろされているこの曲は、やはり正式にバッドエンドを迎えていることになるのでしょうか。

ラスサビ後にとっておきメロディが展開されるのは『さくら』ぶりで興奮していたのですが、その代償として“それでも”が殺されていたならば複雑な気持ちです。

ヒガシズム

ヒガシズム

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255


どうでもいいけど「リライトできないシナリオ」のメロディって『ポルノ映画の看板の下で』のラスサビを歌い出したくなりますよね。


MVのアナザーストーリー

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元々OP/EDに縛られないコラボ曲なだけあってボリュームたっぷりな印象でしたが、MVでは緊迫感に没頭しているうちに見る見る過ぎ去る6分間でした。

とりま雑感を箇条書き。

  • バスで遊んでいたスマホゲームが優がやってたやつにそっくり
  • 1番の「砲弾発射の耳鳴り」が上司の叱責で草
  • ああいうアカウントに限って“鏡”とか誤字ってるのがリアル
  • 毎サビ「逃れられぬ」で秋田さんが映るとこ好き(特に2番)
  • 事件当日のおはようガンギマリフェイスも好き
  • 夢の中の錆びた剣が起きたらナイフって演出の納得感
  • 最終的にスワイプされるのも期待を裏切らない

匂わせ画像の公開時から僕は『空っぽの空に潰される』の実写てるてるを連想していましたが、巷では『あんたへ』MVのバッドエンド版のようだと言われているのを度々目にしました。

確かに、苦悩する社畜と弾き語る秋田さんを行き来する構成が瓜二つです。そのくせ曲終わりの表情は対極的になってしまったのが…。

この辺はヴィレッジ本編と比較しても、未遂で終わったか終わらなかったかという決定的な違いがあります。

僕だったら肝心の“失ってほしい物”以外をピンポイントで失ってしまった青年Aの方が悲惨に感じてしまうかもしれません。やり切れなさが本当にやり切れないまま宙ぶらりんにされてる感覚を想像するだけで暴れたくなります。

無論、やり直せる望みが圧倒的に薄いのは優の方なんですけどね。

映画内では彼だけに見えていたとされる謎の穴、それに吸い込まれてしまった青年Aも決してポジティブとは言えない結末を迎えていそうです。


それにしても映画、コラボ曲、MVと立て続けに解禁されて、もれなく救いの無い内容だったのは純粋に「攻めてるなあ」って感想になりますね。この作品群は今後どんな風に評価されていくのでしょうか。

満足感とはまた異なる気がしますが、受け取るものは多い4月でした。


\(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ!
\(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ!
\(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ!
\(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ!


あ、そういや横浜さんが大河ドラマの主演に決まったそうですね。

僕はテレビをほぼ観ない人間なのであれですが、ミュージシャンにとっての武道館ライブみたいなもんだろうと捉えています。おめでとうございます。