こんばんは、ダーレクです。
7thフルアルバム「永遠市」のリリースからもうすぐ半年ですね。ツアーも完走してしまった今、好きな収録曲を問われて挙がる答えも十人十色でしょう。
されど僕だったら『超新星』一択です。
初めて聴いた瞬間からその中毒性が失速したことはなく、『パーフェクトライフ』『ハルキオンザロード』『馬鹿騒ぎはもう終わり』に続く4曲目のマイ殿堂入り曲となりました。(3〜4年周期で増えていって嬉しい)
本文はアルバム感想記事の一部になる予定だった内容ですが、文字数や熱量の兼ね合いでこの曲だけ特別待遇でお送りします。
曲調が良すぎる
イントロ&アウトロが潔すぎる
『超新星』は4分15秒で終わる比較的短めの楽曲です。
短さの秘訣は、休まず歌い続けている主旋律。簡素なイントロでとっとと1番が始まると、間奏抜きでラスサビまで走り抜け、そのままアウトロで楽曲がフェードアウトしていきます。
「リリックを伝えるにあたって無駄を徹底的に削がれた構成」と言えるでしょう。
アウトロ→イントロのボルテージが殆ど変わらないため、曲が終わると自然ともう1周聴きたくなる罠が張られています。灰にならねえ超新星です。
それ故にリピートを始めると休憩するタイミングがないので、僕のような重症患者はイヤーワームから抜け出せなくなる日もしばしば。
最低音ラップが強すぎる
『超新星』の特徴の一つといえば、曲の大部分を占めるAメロのお経低音ラップでしょう。
韻を踏みまくる秋田さんが微笑ましいだけでなく、このAメロには「amz全体の最低音(lowF#)が使用されている」という特筆事項があります。
他には『つじつま合わせに生まれた僕等』『リビングデッド』『夕立旅立ち』のみで使われてきた音域なのですが、この曲はその使用頻度でさらに一線を画しています。
これまで1曲につき1〜2箇所が関の山だったはずの最低音が、こと『超新星』では合計12箇所も使われているのです。いよいよ正気の沙汰ではありません。
かと言って裏声でメリハリをつける方向に作曲が進んでいたら、あのサビにも出会えなかった可能性が出てきます。わざわざ低音ブーストを選んでくれた秋田さんマジでありがとう。
サビのメロディが心地よすぎる
僕が伝説の匂いを初めて嗅いだのは、フラゲ日の前日に投稿された公式チャンネルのshort動画でした。
他の新規楽曲がイントロや間奏をメインで切り抜かれていたのに対して、『超新星』だけは1番のサビを贅沢に起用されるという高待遇を受けています。
これに関しては「他の箇所がプロモーション向けではなかった」という消去法も考えられますけどね。イントロもラップパートも簡素な構成なので、初見で振り向かせるにはパワー不足だと判断されたのかもしれません。
何はともあれ一番好きなメロディを一番初めに聴いてしまった僕は、この曲に運命を感じながらフル音源を待ち望んでいました。
『超新星』の何が良いかと問われて、真っ先に語りたくなるのはサビのメロディーラインなんですよ。
つじつまの「切り倒されて街が出来て」の頃から「レ#→ミ→ファ#」という流れを心地よく感じる性癖があることは自覚していました。(移調するとそうでもない)
今回それがサビ毎に6回ずつ聴けるように改良(?)されており、理論的にも僕にとっては薬物チックな楽曲なのです。最低音の乱用も含めてどうかしていると思います。
歌詞が良すぎる
1番
どこの誰だと問われ行く道を指さす 野望はあらすじより似付かわしい背表紙
青森から来たamazarashi曰く「野望(行きたい道)は背表紙(名前)に似つかわしい」らしいです。表現方法がオシャレ。
『名前』の「君を語る名前が何であろうと 君の行動一つ程には雄弁じゃない」を自分に当てはめたバージョンでしょうか。
『ディザスター』の「肩書きは進行形の作品」もほとんど同じことを歌っていますね。
amazarashiの歌に時折出てくる「荒野」は、他の使用例も照らし合わせると「道なき道」を暗示しているように見えます。良くも悪くも未来が無限に広がっている様子というか。
僕はAndroidユーザーなのでitunesには共感できませんが、皮肉屋を自覚した「銃座にアイロニー」にはじわじわ来ます。
やった分の金は貰う だけど手にしたいのは 金で買えないもの だからこその出来事
喜び、ほころび 花は芽吹く泥濘 まさかとよもやが明日以降待つきっと
この辺は『曇天』を思い出すんですよね。
金よりも大事なものがあるだろってスタンスとか、「まさか」を心に留めている感じとか。
お先どんよりな状況では、こういう思考が自然と湧いてきやすいのかもしれません。
病んだって生きる為に笑う笑う 幸、不幸も生きていれば代わる代わる
行けるとこまで行く 行けるとこまで行く
落ち込んだ視点から「七転び八起き」的な決意表明。
6/8拍子で着実にボルテージと音程を上げてきたはずが、この直後には唐突な4/4拍子で「失ったらもういいぜ」というちゃぶ台返しが炸裂します。心なしかビートも萎れながらサビへ突入。
サビ
失ったらもういいぜ 僕だったら超新星
眩しく輝いて 消えても消えない夢
駄目だったらもういいぜ 灰になれ超新星
目が眩む残像を 空の隅に残す
見上げてくれ葬式で
拍子抜けな言葉の勢いのまま、捨て鉢な感情が解き放たれるサビ。脱力感のギャップが癖になります。
曲中で最高音が使われているのは、Bメロの“大事な事なので二回言いました”シリーズとサビの「ちょうしーんせい」のみ。輝くべき箇所がピンポイントで輝いています。
熱く語ったり開き直ったり態度は不安定になりつつも、音楽を想う強さは一貫していることが伝わってきます。
「もういいぜ」と言い放った割に「葬式で〜」のロングトーンは何だか未練がましく聴こえてきますし。
サビについては最後に深堀りするので一旦先へ進みます。
2番
君の姿夕景 儚いその縁取り 涙こらえる瞳 祈りだけが付き添い
弱いと認めたとき味方になる無知の知 あやふやな勇気に、かさぶただある意味
君は輝く だけど絡まる 軋轢には憚る けど余計胸は高鳴る 早まる
2番からは「君」が登場します。
いくらなんでも3番に出てくる「あなた」がリスナーを指しているため、こちらでは対象が異なると考えるべきでしょう。
「夕日に君の背中(弱々しそう)」
「君は輝くけど絡まる(からの知った風なエピソード集)」
「夜に仄明るい月纏い(あと羽ばたいてほしい)」
客観視しつつも他人の線はないということで、君の正体は「過去の秋田さん」だと推測するに至りました。そういえばBメロの描写からもそんな予感がしてたんだっけ。
覚えといて損はない「世の中そんな甘くない」 知った風な奴らは世の中代表じゃない
「誰も歩かない道を選んだ僕らだから 人の言う事に耳を貸す暇はないよな」
「身の程知らずと ののしった奴らの 身の程知らなさを 散々歌うのだ」
とまあ『ひろ』や『命にふさわしい』の一節とそっくりなうっせぇわです。
ここもやはり、リスナーというよりは自分自身にアドバイスしているように見えますね。こういうメッセージを他人に向けるのは別のアーティストの役割って感じがしますし。(ややオブラート)
最悪な予感ばかりが付きまとい 君は夜に仄明るい月纏い
どこまでも羽ばたけ どこまでも羽ばたけ
「付きまとい」と「月纏い」で完璧に韻を踏みつつ、絶望と希望の対比にもなっている芸術的なコンボ。
秋田さんは夜に因縁がありますが、最近は悪くない意味で捉えている楽曲が増えている気もします。『ロストボーイズ』とか『ごめんねオデッセイ』とか。
ところでshort動画で鳥が羽ばたいているのは、多分この歌詞からAIに生成してもらったからですよね。笑
3番
報復が好物 隙を狙うローンウルフ 温みを知り頬擦る 子供の毛で血を拭う
幸福は過ぎた願い 目を背けた青空 虚飾も卑下も脱いで なお残る我が身アートマン
涙目 ありったけ 見たまんま傷だらけ 情けねえ姿で今日の生身を歌え
誰が為鳴る鐘 闇を穿つ雨だれ あなたへ突き刺され あと少しだ朝まで
APOLOGIESの2022〜23年のバースデーメールとしてコピペされていたのがこの歌詞の初出です。(開設日の11月14日が切り替えタイミングとして濃厚)
21〜22年分も後に『空白の車窓から』のサビとなって驚いたものですが、いよいよ今回は隠す気がなさすぎて近いうちのリリースを一瞬で察していました。
休養明け一発目に作った曲ということで、一刻も早くこのフレーズ達を突き刺したくなったウキウキ秋田さんが目に浮かびますね。誕プレにちょうどいいやじゃないんだよ!笑
所有権は僕以外あり得ない 一小節で世界凍り付かせたい
これは手放せない これは手放せない
「金品目的の窃盗犯は 私の書いた詩の一行だって盗めやしない」と言わんばかりの尊厳表明。
世界に良い影響をとかではなく、あくまで凍り付かせたがっている辺り流石の皮肉屋さんです。笑
だからこそ、結局「失ったらもういいぜ」と白紙に戻して曲を終わらそうとする姿勢がどこか引っかかるんですけどね。
アウトロがループするのも含め、そんな浮き沈みを繰り返して秋田ひろむの音楽活動は続いていきますよって意味なんでしょうか。
追記:あまざらし音源を一般解放するような秋田さんの「所有権」という排他的ワードチョイスについて疑問を頂いたので、僕なりに再考してみました。
『明日には大人になる君へ』と同じことを歌っている説は曲げないとして、ここで主張されている“侵害できないもの”とは何か。
僕は「その歌詞に込められた真意」と解釈しました。ランクマ上位の構築を丸パクリしても上手く使いこなせないように(ポケモンの話)、歌詞の本当の意味とは作詞者だけの特許なのかもしれません。こんな風に解釈が難しい曲なら尚更です。
世界を凍り付かせるような一小節も含めて「我が道を突き通したい」という想いをぶちまけているのかなと。
「僕だったら超新星」って結局どういう意味?
サビは3回とも同じ歌詞を繰り返す上に、他のパートよりもコンパクトに纏まっており、重要なメッセージが圧縮されていることが分かります。
中でも僕が疑問を覚えていたのが、Bメロから繋がる「失ったらもういいぜ」と、サビの歌い出し「僕だったら超新星」という2つのフレーズでした。
リリース日からずっと考察し続けて、最近ようやくしっくり来る解釈に辿り着くことができたので共有させてください。
【サビの最終解釈(※括弧書きモリモリ)】
「行けるとこまで行く!」
「どこまでも羽ばたけ!」
「これは手放せない!」
⬇
そんな気持ち(モチベ)を「失ったらもういいぜ」
(※結果的に2022年の秋田さんは失わなかった模様)
⬇
「僕だったら(その顛末を)超新星(と呼ぶぜ)」
⬇
「眩しく輝いて消えても消えない夢(≒野望)、駄目だったらもういいぜ(同義語)」
「(その時はいっそ)灰になれ超新星(≒僕の音楽活動)」
「(ただし)目が眩む残像を空の隅に残す(から)見上げてくれ葬式で」
『ディザスター』では「没後評価されて喜ぶ作家なんているもんか」と歌っていましたが、没後“も”評価される分には嬉しいってことなんでしょうか。
総じて「モチベを失ったら一巻の終わりではあるけれど、それまでに生み出した作品達がリスナーの脳裏に焼き付いているだろう。」って角度で自信に満ちているように見えます。
「おれの最期の音楽だぜーーーみあげてくれーーッ」ってことですね。(言いたいだけ)
以下、サビの歌詞から連想した既存曲についての雑談です。
『カシオピア係留所』と似てる
息を止めないで どうせ灰になるなら いっそ燃やして
駆動する鼓動 残さず遺す 胸の奥の方 胸の奥の方
この世にあるほとんどのものが 成し遂げた奴らの血の跡としたら
それに立つこの言葉は 過去の誰とも違う
自惚れて それを書き足せ その痛みは共通言語だ
どちらも自分がいなくなった後の世界に何か託そうとしている曲なだけあって、特にラスサビの類似点がめちゃめちゃあるんですよ。
「灰になれ超新星」とか「目が眩む残像を空の隅に残す」とか、「葬式」と「血の跡」もかなり近い意味だと思いますし。
過去・現在・未来を遍く見渡して、先人達との繋がりも強調されている『カシオピア係留所』は今に比重が置かれているというか、ある種「過程」を大事にしている印象を受けます。
一方で、一人の人間というスケールで託そうとする『超新星』の方がちっぽけではありますが、クローズアップされている分だけ「結果」に期待を膨らませてしまいますね。
『エンディングテーマ』と似てる
僕の中で生きている 僕が愛したもの達みたいに あなたの中で生きていたいよ
あなたが死んだら 流れ出すエンドロール 僕はきっと 脇役だろうな
あなたの胸に焼きついて 消えないような 気の利いた言葉を 言いたいんだけど
そんな事考えてたら もう時間か
フォーカスしたい箇所はカシピと大体一緒ですが、「脇役だろうな」「空の隅に残す」というやや遠慮がちな姿勢は『エンディングテーマ』固有の共通点だと思います。
「リスナーの記憶にいつまでも残っていたい」という先程の解釈はこの曲から着想を得て補完しました。
でも『超新星』の秋田さんが最期に「ありがとう」を遺すとは思えないような…さっき世界凍り付かせたいって言ってたし…笑
『星々の葬列』も思い出す
笑って 笑って
天の川は星々の葬列
宇宙のパレード 宇宙のパレード
さぞかし大きな星が死んだのでしょう
超新星の意味を調べると「でっかい恒星が死ぬ瞬間の大爆発(意訳)」と出てきます。それを遥か遠くから眺めているのが『星々の葬列』に当たるのでしょう。
つまるところ「見上げてくれ葬式で」を地で行っている楽曲なので、ツアーのセトリ予想でも自信を持ってぶち込んだ思い出があります。一体いつになったらライブでやってくれるんですか!