こんばんは、ダーレクです。
永遠市ツアーも完走目前ということで、しれっと未投稿だったアルバムの感想を仕上げにかかっています。
その中で“楽曲の感想”ではない部分がヒートアップしてきたため、副産物を先に放出することにしました。ざっくり前編みたいな扱いです。
今作の異質感についての仮説
5年以上続いた「集大成ムード」の終わり
いつしか僕自身も麻痺していましたが、2017年のベスト盤以降は毎年のようにメモリアルな要素が盛り込まれてきました。そりゃあ感動するわな。
2017年:ベストアルバム「メッセージボトル」
2018年:集大成を込めた武道館ライブ「新言語秩序」
2019年:またベスト盤みたいなツアー「未来になれなかった全ての夜に」
2020〜21年:コロナで引き伸ばされた10周年イヤー
2022年:切り札『1.0』をまたいだ名作「七号線ロストボーイズ」
次第に「amazarashiもここまで来たか…!」という反応がスタンダードとなり、僕の期待もそこらへんに凝り固まっていたような気がします。
そんな感動のぬるま湯に浸かっていた僕にとって、真に通過点でしかなさそうな「永遠市」の作風はまさに想像の斜め上。それこそ“僕の期待”をすり抜けたもんで初めは反応に困りました。
けれど、今までのだらだらと名曲が生み出されるだけの流れが打破されたのはポジティブな変化だと捉えています。
空白だったページに数多の“これから”を体現する新規楽曲が揃っちまったなんて…!
「応援ソング」でなく自分の歌が中心
一部のタイアップを除いて「永遠市」には分かりやすい応援ソングが存在しません。
上っ面だけで「何とかなる」とは言ってくれなかったり、バースデーメッセージになった「あなたへ突き刺され」も実のところ自分本位の発言だったり。(これはこれで褒めてる)
かつての「言葉を取り戻せ」「足りないままで幸福になって」「見つかりますように」のような、こちらに直接語りかけてくるフレーズが異様に少ないのです。
もっぱら自分のことを歌っている都合上、今作のメッセージは「僕ら」で括られる比重が高まりました。「僕ら始めようとしてる」から「白紙に戻れない僕ら」まで僕らたっぷり。
amazarashiは君の味方だよ♡で安易に神アルバムを確約するのではなく、あくまで秋田さんの心情に共感してもらおうとする昔懐かしい手法がメインとなっています。
収録曲全体で一つの雰囲気を作り上げようとする様も含めて「千年幸福論」など過去の作品に近しいものを感じました。
時代が進むほどアルバムのMV枠は応援ソングが中心になっていきましたが、振り返ってみれば最初期もそういう弾はなかったじゃないですか。
久々におあつらえ向きな楽曲が生まれなかったことで、費用対効果だか知らんけどMVも記念碑感覚で『下を向いて歩こう』を刻むに留まったのかなと。(なお後述のディザスター)
アルバムの構成が懐かしすぎる件
短編ポエトリーの復権
「永遠市」の特色の中でも地味にアツかったのは楽曲構成の変化、特に曲間のインタールード役としての短編ポエトリーが帰ってきたことでしょう。
直近3作のフルアルバムでは『ワードプロセッサー』『拒否オロジー』『感情道路七号線』と、いずれもポエトリー曲(やそれに準ずる曲)がトップバッターでした。後者2作に至っては短編ポエトリーが他に収録されていません。
フルアルバムの1曲目に通常サイズの楽曲が帰ってくるのは「世界収束二一一六」以来です。近年のamazarashiらしさの一端を担っており、秋田さんも露骨に味を占めていただけに驚きましたね。
にわか時代は「かさ増し?」なんて邪推したものですが、今やポエトリー枠の復権にはメリットの方が多いと考えています。
どんなアルバムにも存在する“章の転換点”を捉えやすくなるのが最たる例でしょう。通しで聴く際の休憩ポイントにもなりますし、大抵はアルバム制作の終盤に生まれるので世界観を深く反映したものが多いのも魅力。
MCや前口上で流れを好きに変えられるライブでは「ポエトリー無くてもいけるじゃん!」と思えるのですが、やはり音源の総合力のみで勝負するアルバムという形式には必要不可欠な役割です。
不可抗力でぶち込まれたタイアップ曲を馴染ませるのもインタールードの仕事の一つ。だからと言って乱用はできないので、アルバムとして違和感なく着地できる時期にリリースされたことは幸運だったと思います。
また、短編ポエトリーは短い尺だからこその実験的な作曲ができるのも強み。どちらかと言えばシングル盤のカップリング曲で顕著ですが、アルバムでもその機会が多いに越したことはありません。
今作は王道寄りの『クレプトマニア』とキショすぎ変化球の『俯きヶ丘』を両方楽しめる理想的な構成でした。
唯一、ネックとなるのはセトリの枠に限りがある点ですね。ただでさえ近年はライブのポエトリー枠が削られつつあり、逆転劇がどんどん絶望的になっているのです。
リリースツアーを逃したポエトリー曲がその後のライブで初登場した前例はないので、早くも『クレプトマニア』は窮地に立たされてしまいました。
それ故にポエトリー尽くしのセットリストなんかは定期的に妄想しますけど、あの秋田さんがレア曲をボコスカ披露しているライブというのは想像し難いですね…。
少し前にも書きましたが、15周年ライブにも楽曲リクエストがあるとして、敢えてポエトリー曲を推すなら『生活感』が最も結託しやすいと思っています。ただし僕が加勢できるかは別問題。
終盤のベストアルバム級コンボの消滅
開幕ポエトリーと同時期からフルアルバムのお約束となっていたのが、ベストアルバム級にやばい楽曲のコンボを終盤に持ってくる構成です。
『たられば』→『命にふさわしい』
『独白』→『未来になれなかったあの夜に』
『1.0』→『空白の車窓から』
無論「永遠市」にもそれを期待していた僕は、曲名が明かされた際も『ディザスター』『まっさら』という並びに全力でワクワクしていました。
ところが蓋を開けてみると従来とは異なるアプローチの2曲で、最大瞬間風速で言えば僕の期待を余裕で下回っていたのが正直なところです。
曲名が激重な割にさっぱりアレンジだった『ディザスター』は、ツアーのように序盤の案内役を務めた方が輝けたと思うんですよね。
反対に、初聴で埋もれつつもツアー参戦以降じわじわ株を上げたのがアルバムの4曲目『ごめんねオデッセイ』でした。お前実質“独白”なのに何で序盤に消化されてんだよ!
ということで曲順の改善案を持ってきました。叫んでいいですか?
【永遠市改】
01. インヒューマンエンパシー
02. 下を向いて歩こう
03. アンチノミー
04. 君はまだ夏を知らない
05. 自由に向かって逃げろ
06. ディザスター
07. スワイプ
08. 俯きヶ丘
09. カシオピア係留所
10. 超新星
11. ごめんねオデッセイ
12. クレプトマニア
13. まっさら
所信表明系を終盤に固めつつ、これなら従来のコンボで終わるアルバムではなさそうだと思えるんじゃないでしょうか。
ポエトリー曲→トリ曲という締め方は、「千年幸福論」の『冬が来る前に』→『未来づくり』という流れを比較対象として想起させる狙いがあります。
くださいください
インタビュー記事を〜!
これまでamazarashiが新譜をリリースする際には、ネットインタビューも同時期に公開されるのがお決まりの流れでした。
なんなら複数のサイトで別の記事が書かれることも珍しくなかったはずですが、どういう訳か今回のリリースに合わせた裏話は何一つ出てこなかったのです。
どちらから持ち掛けるものなのか知りませんが、まるで潮が引くように全メディアが去ったとは考えづらく、秋田さんが意図的にインタビューを受けなかったとする方が自然でしょう。いやまあどちらにせよ不自然なんですけど。
この後も追求しますが、今作のプロモーションの少なさは常軌を逸していますよね。それこそ新規ファンの獲得はアウトオブ眼中ですよと言わんばかりに。
何よりインタビューがないと新譜についての情報量が激減し、各収録曲の意図やバックグラウンドなども自ら考察することを余儀なくされます。要約されたライナーノーツだけでは全然足りませんからね。
歌詞の考察を楽しんでいる人も一定数いそうですが、もうちょい適当に聴いている僕にとっては惜しい情報源を失ってしまいました。
さらに今作は韻踏みで抽象的になっている箇所が多かったため、遅効性のアルバムとなるのも必然だった気がしますね。僕も一周目は『超新星』が好きすぎるだけの新曲群でしたもん。
その結果、永遠市ツアーのMCが実質的にインタビューを肩代わりしているのが現状です。
思い返してみれば、過去のツアーでは「いやそれインタビューと言ってることほぼ同じじゃん」ってMCも時々あったじゃないですか。
そこで被りが発生しなくなったと言えば聞こえはいいですが、MCの価値が上がったということは秋田さんのアドリブ発言に未曾有の責任が生じているとも取れる訳で。
とりわけ追加公演で語られる内容は永久保存版。ここの充実度次第で「永遠市」の解像度が左右されるでしょう。漢のリスク一点集中!
それはそうと、現時点で僕がアルバムの理解を進める糸口となったのが東京公演のMCでした。
よく目標を訊かれて「一生音楽続けること」って答えるけど、最近ようやくその入口に立っている気がして、そういう覚悟を「永遠市」に込めた。この後の2曲もそういう曲。去年出した「七号線ロストボーイズ」は名作を作ろうと思って作った。(ここまで意訳)
雰囲気はライナーノーツの内容と似ていますが、対比が用いられたことで「七号線ロストボーイズ」よりも自分勝手に作ったという視点が新設されて、収録曲に込められた想いの輪郭がほんの少し鮮明になったんですよ。
「七ロスの方が良かった」という意見は少なからず目にしてきたし、僕の第一印象もそう遠くない場所にありました。それすら秋田さんの塩梅の下で踊らされていたという衝撃の事実。
名作を作ろうと思えば作れるアーティストならば、タイアップ曲のクオリティに定評があるのも頷けますね。そういえば「チ。」のアニメ情報がそろそろ動くらしいですが果たして👀
『ディザスター』のMVを〜!
twitter.comamazarashi がvaultroomとk4senとのトリプルコラボが決定。
— amazarashi (@amazarashi_info) 2023年10月25日
詳細はhttps://t.co/S7bzbAbddP
vaultroom https://t.co/B8PYVplwaE
X https://t.co/71WPC29HQr pic.twitter.com/0y0cvLGlEC
アルバムのリリース当日に発表されたk4senさん&vaultroomとのトリプルコラボ。
『ディザスター』が書き下ろし楽曲だと明かされたことで「なるほどこの曲がMVの2枠目か〜」と納得してから1ヶ月半が経ちました。まだですか??
コラボ服がメインコンテンツなのは分かりますが、ゲームコミュニティに眠る新規層をごっそり沼らせる機会を見逃したのは結構笑えないミスだと思っています。
しかも商品は爆速で売り切れたらしいので、楽曲の賞味期限も一夜限りだったようなもの。あとは先方のお客さんが『ディザスター』の存在を忘れるのを待つだけです。
逆もまた然りで、将来のamzファンは「永遠市」の12曲目が何かのコラボレーションだったなんて知る由もありません。そんな寂しいことが起こっていいのですか。
もしも熱が冷めないうちにk4senさん主演のユニークなMVをぶち込んでいれば、面白がって観に来てくれる一見さんはある程度いたと思うんですけどねぇ。
実際、k4senさん自身も楽曲をプッシュしきれず不完全燃焼だったように見えました。当初はYouTube Premium版のURLを共有してたけど削除してるっぽいし。
果たして彼のファンの何割くらいが『ディザスター』をフルで聴いたことがあるのでしょうか。
いつもなら本山敬一さんやYKBXさんを投入してフルパワーのMVを引っ提げてくる場面なのに、マジで道すがら何があったのが不思議でなりません。
そもそも先行配信に併せて『下を向いて歩こう』のMVが公開されて以来、shortの試聴動画が面白かったくらいでアルバムのプロモーションはほとんど行われていません。
ツアーを周回している僕はずっとお祭り気分でいますが、参戦していない人達が蚊帳の外に置かれているようにも思えるのです。さっきもアウトオブ眼中を懸念しましたけど。
シングル盤の待遇がケチ臭くなっていることを憂いたのは今年の頭でしたっけ。早速その波がアルバムにもやってきたか…とかもう不安事しか書けないですよ。
くそくらえマネタイズ精神なのか、なんらかの理由で予算が降りていないのか、真実は関係者のみぞ知る😡